ーTOPへ戻るー

  食の安全

今年は中国餃子問題から始まり、メラミン添加問題と、なんと中国食材に関する不祥事の多かった年は無い。加え、国内の産地詐称問題等消費者無視の事件が多すぎた。

内容を見ると、
 @工場内に於ける安全管理に起因するもの。
 A「食の安全という概念」が社会的責任という認識より、結果を考えない最大利益追求に起因する
   もの。
 B輸出入における検査機関の脆弱さ。
等が浮彫りになっている。
しかし、結局は人間の問題であり「性悪説」が「性善説」より優勢であったということの証明に他ならず、性悪説が性善説を凌駕する世界は、末期的症状に他ならない。

通常、人間を信じ、こんな事をするはずは無いとの前提で安全管理をしているはずであったのが、@の餃子問題は組織上の安全管理の問題より個人のモラルの問題であるはずである。
では、個人をして毒物混入をせしめたのはなんであったのか。おそらく怨みによる犯行であったのではないかとうかがわざるを得ない。では何に対する怨みか?社会に対する怨みか、企業に対する怨みか。社会的怨みなら消費者を狙ったりはしないと思うので、寧ろ企業に対する怨みの方ではないかと思われる。
では、なんで企業なのか。事件のあったこの企業では事件直前に多くの人員削減を行っており、中には怨みに思う人もいたかもしれない。何の為の人員削減か窺い知ることは困難であるが、もし企業側がより多くの利益追求の爲の人員削減で、退職者に対する保証をしなかった場合、当事者の目にはただ企業側の金拝主義と写ってもおかしくない。特にこの問題が発生した数ヶ月後に中国国内で、日本と同様な事件があったり、明らかに企業側の当初発生した生産ロットの廃棄を怠った事が第一の原因であった。当初、日本側の問題としていたが本来なら安全を考えた場合、解明するまで、当該ロットの製品等は最低、回収か廃棄をするくらいの配慮が肝心なのであるが、まったく行っていない。此れを見てもこの企業が『安全より利益』と写っても仕方がない。
Aの問題は中国から政策米として糊用古米を輸入したが、カビが発生している事を分かっていながら、糊用だから、限定使用として販売した。しかし卸業者はこのことを知りながら幾つかの販売店を経由―お米ロンダリング―しながら数倍(30倍と言われる)の価格で、煎餅加工業者に売ったり、弁当業者に売ったことが判明した。これもまた『安全より利益』であり、自分さえ良ければという金拝主義が原因であろう。
Bの問題はAの問題を起こした真因は政府による「カビ発生を知りながら」という事にあり、本来輸入検査時に中国側に返品する毅然とした姿勢が重要である。多くの冷凍野菜食材や輸入生鮮野菜食材には禁止の強い残留農薬の危険性があり、此れに対する検査体制とルール作りが脆弱であることは市場に出てからの事件が多いことを見ても分かる。本来国際的にも禁止されている農薬が中国でも当然禁止対象であるはずであるが、どういうわけか中国側の税関をすり抜け、日本側(中国側を信じたのかどうか定かでないが)をすり抜け、市場に出回ったことに対する国の検査体制を反省させられる。
中国側の禁止農薬使用はより多くの収穫を目的とした此処でもまた『安全より利益』の構図が見られる。この裏にも日本側輸入業者の暗黙のプレッシャーがあったかもしれない。
メラミン添加問題もまた『安全より利益』の顕著な例であろう。産地詐称の問題もしかりである。


これ等の問題の根っこの部分に於いて、市場原理主義による「金拝主義」がもたらした。格差社会の歪の一端であろう。下層社会の人々は金持ち社会の人達を羨望の眼差しで、自分も金持ちになる為には他人のことは考えず悪知恵だけが先行する。サブプライム問題にみられるデリヴァティブ問題も結局「金拝主義」であり、皆人間のとどまる事を知らぬ欲望の結果である。
しかし、「デリヴァティヴ問題」と「食の安全問題」の違いは、前者は直接的には人命に係わる問題ではない―失敗すれば、全財産を失い、首をくくる人もいるし、また不況をもたらし庶民に塗炭の苦しみを与える―が、「食の安全問題」は直接消費者の命に係わる問題でこちらの方がはるかに始末が悪い。

これ等は結局は人間は元々「性悪」の生き物と結論を導かざるをえなくなるとは、なんと悲しい事ではないか。企業はもう一度、なんの爲に「企業は存続するのか」を考えるべきであろう。


今回の問題食品の多くはレトルト食品であったり、ファミレス食品に関係しているものが多く、昔より、外食による食生活の旺盛さがうかがい知れる。出来れば自分で食材を選び、料理を楽しみたいものである。

人は皆
       『足るを知れば辱(はずか)められず。』―老子―
を今一度考えたほうが良いと思う。
人間、「性善説」でいきたいものであることを、今年ほど考えさせられる年はなかった。

会長の独り言(その四十)
                          閑話休題