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タイの屋台――バッタイとドリアン――


タイには毎年訪れているが、目的の昆虫調査もさることながら、行く先々のローカルな食べ歩きも楽しみのひとつである。
今年6月のタイ北部Phayaoの町での屋台風景は楽しさを倍増してくれたものである。

夕方、シャワーを浴びて運河脇の屋台が並ぶところへ出かける。
屋台は200m位にわたって軒を連ねており、ひととおり端から端まで覗いて見ることにする。各店それぞれ特徴を出しており、カレー専門であったり、ソバ――バーミナーム:タイのラーメン――であったり、ヤキソバ――バッタイ――だったり面白い。通りをはさんで店が並でおり、食材屋や、定番のタイカレー等のおかず屋であったりで、夕刻の食事時でどの店も混雑している。
我々はChiang Maiソーセージ――コブミカンの葉や、プリキィーヌ(強烈に辛い唐辛子)や香辛料を練りこんだこの地独特のソーセージで、やみつきになる旨さ――と鳥のから揚げB40(¥120)を買う。3人分の酒のつまみとしては充分の量で、安く涙が出る。どの屋台でもビールは置いていないため、コンビニで缶ビールを仕入れ、屋台を物色した。
一軒の屋台に目が釘付けになった。鼻の下に髭をたくわえた、色黒の体格の良い厳つい感じのおじさんのパフォーマンスは、どの店にも見られないもので、大きな中華なべにソバを高い位置から投げ込むように入れ、モヤシやタマネギを素早く入れ勢いよく鍋をゆすり、炒めている。リズミカルに手際がいいばかりでなく勢いとダイナミックさはパフォーマンスそもので食べてみたくなってきた。となりの奥さんと思われる女性は色白で、タイ人というよりも、エキゾチックな雰囲気のあるこの辺では稀に見る美人である。旦那とのアンバランスも面白い。こうなったらここで食うしかない。
小さなテーブルを確保し、あれ頂戴と鍋をゆびさし注文。おじさんは休む暇なく大活躍。すぐ出てくるかと思いきやまだかまだかと思っているうちに、ビールもソーセージもなくなってしまった。それもそのはずこの店、大変な人気で我々より先に何人もの人達が待っている。なかには予約注文した人もいるようで取りに来ている人もいる。これでは待たされても仕方が無い。持ち帰りの人には、新聞紙に美人ママが無造作にバッタイを包んで「はい」と渡す。その辺で食べる人にはビニール袋に入てれやる。
やっと我々の前にバッタイが出てきた。バッタイの上には卵焼きが載っている。
干しエビと野菜のコンビネーションと卵焼きが絶妙、味の秘密はこれかと感心、実に美味。人気ある訳である。
帰りがけに、おじさんに、「コップンカップ、アローイ・マー(ありがとう、大変美味しかったよ。)」と言ったら、あの厳つい顔が大きくくずれ嬉しそうに笑った。その顔の可愛かった事。やっと美人の奥さんとのバランスがとれたというところ。
帰りがけにドリアンだけ売っている屋台を覗く。おばさんが次から次へと3、4sもあろうかと大きなドリアンを解体し1個分ずつハッポウスチロールの皿にパックし重さを量り価格を書き込んでいる。こちらも1パックずつ指で突っつき熟れ具合を確認、B160(¥480)の物を買い、運河脇のベンチで食べる。その旨い事、「たまらないねー」と言いながら、あっという間に平らげた。やっとありつけたこの旨さ。ねっとりとしたカスタードクリームのような舌触りに、なんともいえぬ濃厚な甘さが堪えられない。この匂いを嫌いが故に食べられないと言う人がいるが、ちっとも匂いなんか気にならない。神は2物を与えずと言うが、こんなに美味しい果物を食べられない人は人生の楽しみを、いろんなところで失っているに違いない。以前仲間のK氏は、最初は頑なに拒んでいたのに、我々が旨い旨いというものだから、「では、ちょっと1口」と口に入れたとたんその美味しさに目を開かされ、「チャンスがあったらまた食べたいですね。」とあっと言う間の心変わりをさせた位である。
日本では、初鰹に江戸っ子は「女房質に入れても食べたい」と言った時代があったが、ここタイでもドリアンは同様「女房質にいれても・・・」と言う位垂涎の高級フルーツであるようだ。


フルーツの王様たるゆえんである。他の果物屋台でフルーツの女王・マンゴスチンを仕入れ、興奮を鎮めることにしたのである。


我々のような、ジャングルや山を求めて旅をする人にとって、必然的に大都会より小さな町にお世話になることが多く、食堂・市場・屋台がタイの現地の人達と一緒に楽しめ、土地の人情に触れ、文化に触れ一層旅を思い出深いものとしてくれるのである。


会長の独り言(その四十一)
                          閑話休題