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アンコール再び――その3−3

Preah Khan

Angkor Thomの北門から林に囲まれた大木の並木を抜けるとPreah Khanだ。此処は前回見学したTa Prohmと12世紀の同時代に同じジャヤヴァルマン7世によって建てられた。
Ta Prohmは母親を祀る爲であるが、こちらは父親を祀る爲に建てられた大乗仏教寺院である。平面展開型の寺院で規模は東西820m、南北640mと大きく堂々とした伽羅である。
西参道からが一般ルートである、250m続く参道の両側には日本の灯篭のような境界石といわれるのが規則正しい間隔で並んでいる。丈は1.2〜1.5mくらいで20cm角くらいの角が丸くなっており、下部は四角い柱でその一面に、ガルーダのレリーフがある。

この参道の先はナーガの欄干のある橋を渡ると西寺院である。この橋の下は環濠になっており、干上がって草地になっている。
西門をくぐると正面に西寺院があり、門の両側には2.5mはったとおもわれる1対の頭部のない守護神がある。胸に片方の手をあてたポーズである。日本の仁王様のようなものか、顔が見たかった。三人で同じポーズで記念撮影。
これより中央の回廊を進む。左右にも回廊があるが崩壊で進めない。見学コースは中央回廊をあくまで東に向かって進む。左右には中庭がいくつもあり、壁には沢山のデヴァターが彫られており見ごたえがある。各部屋のしきりの壁には必ずと言っていいほど左右に、剣を持った守護神の像が彫られている。回廊の屋根は崩れている箇所が多いが、回廊の右柱は、二列になっている。中央にジャヤヴァルマン7世の父親の墓の仏舎利がある。隣に首の無い仏像がある。このお墓に線香をたむける。この場所は中央祠堂の真ん中にあり、この辺は天井も残っている。三角のアーチのような天井部の石組みは綺麗に残っており、左右の壁や4隅の柱に仏の彫刻や、神々のレリーフがみられる。
左右の中庭をかこむ祠堂群の壁にはBanteay Sreiに見るような精密な彫刻で埋められており、やはりレースのカーテンを覆っているようである。此処の壁は砂岩で造られているようで、いまや苔むし色彩も緑かかって全体に美しく見える。

また壁はデヴァターに守られており、これ等は風雨に痛めつけられて痛々しく見えるものが多いが、多くはその原型を留めている。ここのデヴァター群はAngkor ThomやTa Prohmに見られるタイプであり、象徴的面立ちの物が多い。本来なら仏像が彫られていたであろう跡が、枠だけを残しただけのものが多く観られる。多分後の王がヒンズー教に変わったため、仏教色の像は削ったか、破壊したか、或いは頭部を切り落としたした名残であろう。中央祠堂の中庭からは南北の尖塔が見られる。さらに中央回廊を進むと本来正門である東門に出るが、東門と中央祠堂の中間にHaii of Dancersと呼ばれる劇場舞台のような広いテラスに出る。ここは日当たりが良くまともに太陽の陽を受け、あたかもその陽がスポットライトのようでまぶしく暑い。石畳の広いテラスはナーガの欄干で囲まれている。中央祠堂に続く回廊部の天井が抜けているが、柱にはアブサラ(天女、踊子)の浮き彫りが多く見られ、これゆえここがHall of Dancersのいわれとなったようである。
このテラスを囲む東・西の寺院の壁にはレースのカーテン宜しく緻密な彫刻とデヴァター達は太陽の陽に明るく、中庭で観たような緑がかった色合いはなく、本来の砂岩の明るい灰色に見える。陽が強く当たる箇所と、日陰になる中庭との印象がかくも異なるものかと自然の妙に感動するのである。
照らすの南側には他には見られない、ギリシャ建築のような丸い柱の2層の建物がある。全体が丸い柱だけの建物のように見えるが、他の建物が平面と鋭角な尖塔群であり、これとのバランスを考えるとなんとも印象深く興味深い取り合わせである。
東門を出てみると、本来正門である堂々とした左右に広がる門であり、門への道は広い砂岩の石畳で左右にナーガの欄干で飾られており、50m位続く。
この本来の参道に入る道、即ち入り口近くの林の中には、ダルマサラといわれる修行僧や、参拝の人達の宿舎だった建物がほぼ完全な形で残されている。
寺院の壁に沿って歩いてみる。
寺院の壁にはTa Prohmで観るような溶樹(ガジュマルの木)が塀や、寺院の屋根を押さえつけている姿が数箇所みられるが、Ta Prohmの規模とくらべると何とかジャングルの攻撃から免れ、ひどい破壊から逃れたようでる。いかにもAnghorの全ての要素を含んだ遺跡の感じで、多く瓦礫でうまっているが、その神秘性と、芸術性と自然の脅威と妙がマッチした感動の遺跡の一つである事間違いない。
帰りの道で、二人の農夫が座り込み小形のゴールデンパイナップルを売っている。皮をむいてもらい竹串を刺してアイスキャンデイの感覚で齧り付く。爽やかな甘い香りが顔中漂い、古今変わらぬ楽しみに舌鼓を打ったのである。
このジャングルの中の遺跡に相応しい思い出となったのである。





会長の独り言(その四十四)
                          閑話休題