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なでしこJAPAN

猛暑の中寝苦しい熱帯夜に眠気と惰気を吹き飛ばす快挙に日本中が沸騰し更に熱くしてくれた。「有難う、なでしこJapan」。「優勝おめでとう」。いまや日本が素直に歓喜した瞬間である。311日以降すっかり沈んだ日本に、こんなに楽しい明るい話題があったであろうか。

女子ワールドカップがドイツで開催されたが、伝統ある男子ワールドカップとは比べものにならぬ地味な存在であった。全体的にあまり騒がれず、気がつけばドイツでの開催に

なでしこJapanの名がニュースに取り上げられ、予選リーグの2位通過、決勝ラウンドに進むころ、日本中に驚きと期待が出始め、3連覇を狙うドイツを降した頃になると、それこそ全日本中が沸き立って一層の期待が盛り上がったのである。

78日未明、アメリカとの決勝戦に粘りと不屈の闘志で同点に持ち込み、最終PK戦まで持ち込んだ。この時点で既になでしこは勝っていたのである。キーパーが最初のアメリカのボールを横に飛びながら片足で弾き飛ばした瞬間益々勝ちが確信されたのである。アメリカそのものは日本に対する侮りから、同点され、PK戦になったときは「こんなはずではなかった」との思いで既に焦りと過度な緊張におちいり、冷静さを欠くPK戦となった。引き替えなでしこは優勝は拾い物くらいの気持ちであったのであろうか、実に冷静なプレーが画面から伝わってくる。アメリカのこわばった表情に対し、なでしこは落ち着いた表情が際立っていた。

それにしても体力的に劣る日本がこれまでに優勝したのか考えさせられるのである。

男子なら「大和魂」一言で解決であるが、女子はそう単純ではない。

日本人は古来より聖徳太子の「和をもって尊しとなす。」を金科玉条の如く、教え込まれた。鎮守の森を大切にし、祭りの文化を持つ農耕民族故の耕作という共同作業は、一所懸命の言葉にあるように、一箇所に定住する民族にとって、この「和」という言葉は素直に入ってゆける言葉であったはずである。

爾来これが日本人のアイデンテティを構成したのに不思議ではない。いまや諸外国に進出する日本企業の戦士たちは、日本人界を創り群れる事が外国人にとっては不気味にみえるくらいである。

欧米諸国の成り立ちは放浪する狩猟民族が主体である為、自分は自分が守り、自分で食料を確保するという事が主流となり、個を大切に「個人主義」がそのアイデンテティとなっていたのである。

いまスポーツの世界を見ても団体競技においても個人の技量が重んじられ、個々の技量の集まりが結果勝敗を決するものであり、チームワークはついてくる様な感覚である。

欧米のプロ球技における個人の年俸を見れば分るように、個々の技量が金で評価されるのである。従いチームとして個々をどう生かすかは次なる課題のようであろう。

 

日本のもって生まれた和の精神がチーム力になってゆくのであろう。

更に、本質的な面では女性の特質は「産みの苦しみ」に象徴されるように、出産は大変な苦痛を伴い、それに耐えられる「我慢強さ」は生物的本能である。加え集団を構成する動物の世界、例えば猿の種の多くは集団で子育てを行い、その中心は雌が共同で行い、そのコミュニケーション力はすばらしい。雄はその集団を統率し、守る役割でボスが存在する。

象の世界でも同じようであるし、ライオンに至っては狩をするのは雌が集団で行い、その

チームワークは見事である。本質はもうひとつの本能「母性本能」があるに違いない。

人間も進化した類人猿であることからして、女性ならではこその動物的本能なのではないだろうか。

過去のオリンピックの団体競技の日本の実績を見ると、女子の団体競技は男子の記録より上位入賞が多いのに気が付くであろう。これこそ女性の集団パワーの強さの証明である。

なでしこJapanが優勝した背景を整理すると。

 1. 女性の持つ本能「我慢強さ」「母性本能」。

 2. 日本という環境「農耕民族」による集団作業。

 3. 聖徳太子「和をもって尊しとなす」の精神とその後における武士道を支えた女性の生き方の教育

等が日本の女性の背景にあったのではないかと思うのである。

特に集団(組織)に於いての従順さや協調性は女性のほうが勝っているように思える。

見逃してはならないのは、この集団を守り指揮するボス(男であろうと女であろうと)との信頼関係が大きく、ボスの資質により力の集結力は決まる事を付け加えておきたい。

男尊女卑の時代に耐え、銃後の守りを通した日本の歴史的背景はいまプラスの面で受け継がれたのではないであろうか。

今後は今まで以上に女性の活用は広く道が開かれて行くであろうし、女性中心の企業も増えてゆくことであろう。こよなく女性を愛するフェミニストとしては、大いにナデシコJapanを賞賛するものである。これからも女性を大切にしなくては。

今回の快挙は「日本はまだ捨てたもんじゃないぞ。」との思いで、日本の復興に国民が一つになったのではないだろうか。 

「和をもって尊しとなす」いい言葉です。

今大型台風が近付いている。この台風を「なでしこ」と呼ぼう。

                     平成 23720

会長の独り言(その六十)
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