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総理大臣になったら I

身内のごたごたで更に評価を下げた民主党、何はともあれ新総理が決まった。日本が直面している多くの問題にどう取り組むのであろうか。

自民党にしても政権奪回したいところだが、あまりの問題の大きさに今は動かぬほうが良いということか意外と静かである。国民の一人として総理がどのように日本を立て直すか期待したいところである。このような時期こそ新総理として最もやりがいのあるチャンスと捕らえてほしい。

政治の要諦はなんと言っても国民を安定的に幸せにする事である。逆に言うと、今は最低の状態であるから政治の力で大いに幸せにするということである。

今国民は幸せなのであろうか。幸せとは何であろうか。一口に言って安心して豊かな生活を送る事であろう。わが国は1986年を境にそれまでのバブル期の絶好調から下り坂になり、25年経ったいままだデフレが続いている状態である。最初は1986年バーゼルにおいてBIS規制が決定し、日本においては自己資本強化のため、固定歩合の引き上げ、総量規制強化が遂行されるにしたがい、株価も、土地の価格下落となり、資産バブルが崩壊した。そして資産デフレが始まり、倒産が増え需要も減退し、企業の姿勢は資産価値下落で残ったのは借金と冷え切った市場には設備も過剰、従いバブル時に世界最高水準となった高賃金労働者も過剰となった。3重苦にみまわれて著しくバランスシートは悪化し、当然企業の行動は、過剰な借金、過剰な設備、過剰な人員の改善を迫られ、殆どの企業が同じ行動を採る事になった。いわゆるバランスシート不況に入っていったのである。このことはバランスシートが改善するまで続けられる為長期に渡ったのである。特に最も頭がいたいのは世界一の高賃金であろう。バブル期には為替も¥120であったのが、円高が右肩上がりで上昇し続け、現在$1=¥80の攻防となっている、その間国際競争力も失われ、生き残りのために労働コストの安い中国へ生産拠点を移さざるをえない状況になったのである。その結果空洞化が始まり、失業者が増大して、更に不況に陥ったのである。所得の増加は望めなくなるばかりでなく、勤務している企業の空洞化による安定勤続の不安は財布の紐が堅くなった、公共料金は値上がり、石油燃料も値上って生活も余裕が無くなり、共稼ぎをしなくては安定した生活は望めなくなった。

そればかりでなく、女性の社会進出と地位の向上も手伝い結婚そのものが消極的となった。その先には将来に対する不安となり、子供を生んでもその子達が幸せになるであろうかとの不安は出生率低下となり、少子高齢化に拍車がかかってしまったのである。この少子高齢化こそ将来における日本の成長に対する危機の本質であろう。

日本は20年間長い経済の低迷から抜け出す事が出来なかったが、欧米諸国、中国、台湾、韓国、アセアン諸国は急速に経済が成長するにおよび日本にも好影響となり、輸出産業も回復してきて明るさが見られるようになった、しかし2008年に突然米国において、サブプライム問題が顕在化し、住宅バブルの崩壊が始まり、不良資産の増大がリーマンブラザースの倒産となり、世界中を震撼させるに至った、あまりにも急激で津波の如く押し寄せた金融危機は直角に経済を落ち込み経済活動減退は欧米を中心に広がった、当然日本にも影響があり、やっと陽の目が見えたとおもった日本経済は真っ暗闇に突き落とされた。

このショックは2010年後半から回復基調となってきたが311日に東日本を襲った大地震は巨大な津波となってあっという間に太平洋岸500キロにわたって、人と家屋、都市を飲み込んだ。

まさに日本の1つの県がなくなってしまったような経済的も影響を及ぼした。経済的損失も16兆円とも20兆円とも言われているのであるが、それにもまして計り知れないのが福島原発である。

その被害は福島県第一原子力発電所の崩壊とメルトダウンによる放射能漏れで、チェルノブイリの再来との恐怖となり、長き将来にわたりおおきな傷跡となった。

今後更に深刻な問題となり、経済問題は時間と金で解決できるが、人類の生存という観点からすると、よりはるかに大きな世界的な問題に発展したのである。

更に欧米では金融危機はEU諸国の銀行危機となり米国の不況に見るように、EU諸国のもまた不況になって行き、さらに財政に影響し、ギリシャのデフォルト問題、イタリア、スペイン、アイルランド等の諸国が財政危機に陥ってしまって、IMFは大忙し。

サブプライム問題によって引き起こされた経済的損失は不況となり、日本の不動産バブル崩壊のあとのバランスシート不況と同じである事からして、解決には時間がかかる事を覚悟しなくてはならない。

従い、いまやアジア圏頼みとなってしまっている。中国におけるリーマンショック以後に見る54兆円に上る財投は世界経済を奈落の底へ落ちるのを支え、インドの成長、アセアン諸国の成長は大いなる支えとなったのであるが、米国、EU諸国の財政問題は格付け会社による国債の評価基準下げとなり、株価下落にもなり、世界の投資資金は行き所を失い金への投資が増えるのは理解できるが、円に対しても震災と原発で極度に疲弊した日本経済であるにもかかわらず外貨準備の潤沢さだけが注目され、円買いが進み、円高になったのである。

このように少子高齢化の背景がグローバル経済の渦に飲み込まれた日本の姿があることに気付くであろう。

これを改善、即ち日本が将来安心して豊かに幸せな国創りを目標に掲げる事こそが重大である。

これらの処方箋を考えてみよう。

短期的には1.東日本大震災の復興。

              2.原発事故による放射能問題の処置。

              3.円高対策

中期的には4.原発代替エネルギーと新産業政策

長期的には5.エネルギー戦略

総理大臣になったら  II

1.東日本大震災の復興:

先ず被災者に対する生活援助は言うに及ばぬが、一面瓦礫の土地となったところをいかに再生するかが大きな問題であるが、将来の都市造りを視野にいれ、二度と津波による被害を招かぬように、高い土地の造成と一般住宅中心の都市造りを国家として行う事である。瓦礫の土地は塩害駆除を施した後畑に再生し新たなる農業企業を育成し、法人化を進めるチャンスとしたり、広大な土地を生かし、太陽光発電のパネル群にしたり、瓦礫処理利用の発電所に活用したり、失われた工場再生のための工業団地の造成、緑地公園等に造成したらいかがであろうか。又港湾においても今回の経験を生かした津波対策の港造りが行い、これらの為には、護岸工事、瓦礫撤去は喫緊のことである。これらのインフラ予算を国家として行い、且つ中小企業再生の為の資金援助、セフティネットの構築、一般住宅の再建の為の優遇措置や、援助は言うに及ばない。これらを緊急に設計・計画し復興需要を喚起しなければならない。

当然復興税も視野に入れるばかりでなく、有価証券を含む、国家保有資産の売却による財源確保も広く考える必要もあるであろう。

2.原発事故による放射能問題の処理

  今回の震災による福島原発の事故はいかに恐ろしい事であるかを知らされたわけであり、日本の将来起こりうるであろう大地震の脅威は今後の原発の縮小と将来の廃棄となることは疑う余地の無いのであるが、解決しなければならない問題はいかに汚染された地域の放射能洗浄、住民の復帰、永遠に封鎖すべき土地を早急に決める事、現在使用済み燃料棒の処理の為の新たなる貯蔵庫の設置、今後の賠償問題等含め、民間企業による原発から国家としての原発事業への転換と制度化は避けて通れぬであろう。その先にある原発廃棄と永遠なる燃料棒処理がある以上国家レベルの問題とすべきなのである。

  放射能に対する情報は逐次開示していくのは絶対条件であろう。

3.円高対策

  現在の円高は欧米の経済状況が長引く事が確実であり円が100円〜85円の水準に戻るには困難であろう。そこで円高を逆手にとって、メリットを生かす事に国家的に戦略を転換すべきである。即ち最近投資銀行が海外企業のM&A推進のための貸し出しが積極的に行われているが、BIS規制を遵守すれば限度がある。しかしこれを中国のように政府が行うようにすることはいかがであろうか。これには企業買収ではなく、資源開発のための鉱山を買う、今後電気自動車需要に欠かすことの出来ない電池のためのレアーアース鉱山開発、石油開発利権、油田の買収、石油の在庫増し等とダイナミックな動きをする事である。その為には、新たに資源開発公団を設置し、資金は世界に冠たる200兆円を保持する郵貯資金の有効活用をおこなう。こうすれば、外貨を買うことにより円安に振れて行くであろうし、世界から見ると、中国が資源を買いあさっている姿を見て脅威を感じると同様に、日本に対する脅威が増大し、その原因が、円高である事が明らかになるに従い、今度は国際協調により円安誘導に向かうであろう。この事例は既に日本がバブル絶頂期に世界強調会議でドルの調整が行われ、$1=¥240から¥120になった、円高と低金利に支えられ投資先がアメリカの資産の買収が旺盛になり、アメリカの魂を買われたとの屈辱感が、円高歯止め、BIS規制にも繋がっていったことを思い出す事である。

  次に円高は本来輸入品価格が低下するはずであるが、ガソリン価格は上がりぱなし、60%を輸入に頼っている食料品も下がらない、円高を享受してる感覚は海外旅行だけであることが実に釈然としない。いかに日本の企業が国際感覚に乏しいことは、長年為替鎖国のわが国では仕方の無い事であろう。輸入品の価格を下げる円高メリットもあり、これらはきわめて為替操作からみた技術面の話である。

4.原発代替エネルギー新産業政策

本質的にはいかに空洞化を防ぐが重要である。空洞化の原因は円高による労働集約産業の国際競争力低下によるものである。

従い、国際競争力ある産業の育成と国家的プロジェクトの構築である。日本の技術力は今回の震災によって、先進諸国の生産に影響を及ぼしたようにきわめて競争力ある技術がある。

  これらの技術力を精査し、今後の新しい産業育成の為の施策を考えるべきであろう。それには、はやぶさにみる宇宙技術、飛行機産業の育成、再生可能エネルギー技術は太陽光、地熱エネルギー技術、潮位エネルギー技術は世界の最高水準である、これらを育成する為の電気の買取や個人による住宅用太陽光エネルギー促進の法的システムの構築は重要である。

5.エネルギー戦略

日本近海に眠るメタンハイドレードの開発等は、新しい産業の育成となり、新たなる雇用と、海外に逃げ出さない定着した産業となりうる。それに加え、このエネルギー開発技術は世界の特許となるばかりでなく近隣諸国への輸出に繋がる。その先は財政赤字の解消に繋がってゆくのである。しかしこれには生産コストの問題があり、これらの技術開発が喫緊の課題であるが、日本の将来のエネルギー大国への夢への実現であろう。

これらが実現すれば、国民生活が安定し、希望のある将来が描け、経済も活況を呈し所得も安定し、その結果に出生率も上がり、国の成長とともに、家族も幸せになるであろう。そして少子化に歯止めがかかる事に期待したいものである。

さらに日本の世界における信頼と羨望の基となり、世界的位置付けも上がり、極東アジアのリーダー国となる事こそアメリカにとっても、対中国戦略におおきな意味を持つ事になるのである。これらの戦略実現は少なくとも10年以内を目標とすべきであろう。

という事を新総理はすでにお考えになられてはいるとは思うが、ここに改めて新政権にエールを送るのです。

                                                               H23.9.10


会長の独り言(その六十一)
                          閑話休題