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タイのセミ
梅雨の季節を迎えると、もうすぐ虫が多くなる夏がやってきます。夏になると先ず夏であることを実感するのはやはり、暑さを更に暑くするセミの声でしょう。


 セミ:専門的には、動物界・節足動物門・昆虫網・カメムシ目(半翅目)・同翅亜目・セミ上科
 学名:Cicadoidea
 英名:cicada
ということになりますが、世界中では2000種、日本では30種あまりが知られています。日本から、東南アジアには650種が棲息しているとされています。
因みに中部以北には棲息せず、大正時代オーストリアの皇太子が訪日した折、「あの鳴く木が欲しい」と言ったエピソードがあります。小生もタイでセミを採っていた時、スウェーデンからの観光客に「あれはなんだ」「Cicadaです」「初めて見ました」と妙に感心していたのを思い出します。



 閑話休題

今年もタイへ虫採りに行ってきました。タイでは3月が最も暑いシーズンで、この時期になると、セミが鳴き出します。タイ語では「ジャカチャン」と言います。うるさいような感じで、なんとなくわかるような気がします。


タイのセミにはいつも驚かされます。この時期には北部の川縁の砂地一面に何万匹のセミが、砂地に口吻を突き刺し、吸水しております。川べりを歩くと身体にばたばたとぶつかる位です。このセミがトリモチを塗った2m位の棒30本位に、真っ黒になるほどくっついております。この時期の貴重な蛋白源であり、収入源の爲の猟なのです。この時期の、Chiang Raiの風物詩です。このセミはチクチクホウシの仲間で、学名Meimuna duffreiといいます。セミを食べる習慣は中国、東南アジア、アメリカ、沖縄に知られております。今回このセミのから揚げを食べてみました。この辺の惣菜としては高く、商売に、なる事がうなずけます。味はというと、海老のような歯ざわりで、特別特徴的な味は感じませんでしたが、不味くはありません。これなた食べられます。特に中国では古来よりセミの抜け殻を止痒、解熱剤として利用している位なので、身体にはいいのかもしれません。

1年を通じてタイにきて、その時どきに、異なるセミの声が聞くことができます。印象に残っているのは、10月の中部の熱帯雨林の中で聞いた声は、初めはその声・音の喧ましさにチェーンソーで木を切っているのかと思うような、「ギーンギーン・・」と甲高い金属的な音で、且つ単調で、森中よく響き、神経を逆撫でするような不快な音でした。本当に「何時まで木を切る気か、国立公園での伐採ありか?」と文句を言って歩いて、それがセミの声である事に気付いたのは人気がまったくないことがわかり、はじめてその音が、セミの鳴き声と納得したくらいでした。
8月には、「ファーン・ファーン・・」という体調10cmになろうか、世界最大のダイオウゼミの声は、ウシガエルの様な大きく響く鳴き声ですが、そんなに不快感はありません。エゾゼミのように鳴くセミは年中聞こえるし、アブラゼミのような「ジージー・・」という、うるさいのもよく耳にします。
しかし、今回の北部の高山で出会ったセミはまったく趣が異なるものでした。はじめ、その声は鳥の鳴き声と思う程、よく似ています。「ピーチャチャ、ピーチャチャ、ピーチャチャ・チャチャチャチャチャ・・」という具合に人間の耳にははっきり聞こえます。これを、ドレミで表現するなら「シードド、ソードド、シードド、ドドシシ」となり、これで口ずさんでみると感じがよくわかります。ただしオクターブはかなり高いのです。
鳥の鳴き声と異なるのは、鳥は喉を震わし鳴くので、体形の大きさによって声の大きさも変わりますが、セミは腹で鳴くので小さくてもよく響き、前者は金管楽器の細い楽器とすれば、セミは大型の金管楽器、或いはドラムのような響きなのかもしれません。
大抵の鳴き声は2文字で表現できますが、日本には、「オーシンツクツク・・オニオーツクオニオーツク・チー」と数文字で表すほどはっきり聞こえるツクツクホウシの様なものもいるのに、ここタイでは数文字は聞いた事はありません。しかし、この、「ピーチャチャ」はツクツクホウシに次ぐのもで面白く、しっかりした旋律を持っているのです。
これを、繰り返し口ずさめば立派な伴奏となり、ステップを踏みたくなるほどで、陽気にさせてくれるのです。流石南洋のセミは違いますねー。


全体的に、タイのセミは陽気で、明るすぎ、喧しい印象で、南国そのものという感じであります。
                 『静かさや  岩に染み入る  セミの声』
と言う訳にはとてもいきません。まして、いまだかつて、ヒグラシゼミのように、ゆく夏を懐かしむような、涼やかで寂しげな情緒ある鳴き声は聞いた事無いのです。環境によってセミの感性もこうも違うのかと妙に、感心した訳です。まして、人間はいかかでありましょうか。
これがそのセミ

会長の独り言(その四十八)
                          閑話休題